賃貸でできる壁の使い方:穴を開けずに棚をつくる方法
あなたの賃貸の壁、もう少しうまく使えないかな、と思ったことはありますか。私はずっとそう思っていて、でも「退去時に原状回復が必要だから」という理由で、何年もの間ずっと壁を白いまま放置していました。去年の秋、引っ越しから3年が経ったタイミングでようやく重い腰を上げて、石膏ボード用のピンフックとディアウォールを両方試してみることにしました。この記事は、その試行錯誤の記録です。どちらが優れているというシンプルな話ではなくて、用途・コスト・撤去後の跡という3つの軸で比べると、けっこうはっきりと「向き不向き」が見えてきた、という話をしたいと思います。
まず試したのは石膏ボード用ピンフック——小さいのに意外と頼れる
石膏ボード用ピンフックというのは、細いスチールのピンを斜め45度で石膏ボードに差し込む小さなフックです。私が使ったのはShinetsu(信越)の「壁美人」シリーズと、ホームセンターで売っていたニトリの類似品の2種類。ピンの太さは0.6〜0.7mm程度で、抜いた後に残る穴は「画鋲より小さい」と各社が説明していて、実際に退去時の原状回復義務の対象外とされるケースが多いです(ただし管理会社によって解釈が違うので、契約書の確認は必須だと思っています)。
耐荷重については、壁美人の場合はホチキスの針を6〜8本打ち込む方式で、公式には最大で約10kgまで対応と記載されています。私は実際にキッチンの壁に取り付けて、フライパン2本と鍋蓋1枚をかけてみましたが、3か月経っても傾きも落下もありません。ただ、ピンを石膏ボードに正確に斜め打ちしないとすぐ抜けてしまうので、最初の2〜3回は練習が必要でした。
次にディアウォールを立てた——自由度は高いけれど準備がいる
ディアウォール(WAKAI製)は、2×4材の上下にはめるバネ内蔵のジョイントパーツで、天井と床を突っ張る形で柱を立てる仕組みです。釘もネジも壁にいっさい打ちません。この柱に棚受けを取り付ければ、文字通り「棚」が作れます。私はリビングの窓脇に1本、寝室に1本、合計2本立ててみました。
作業として意外と大変だったのが木材のカット。2×4材はホームセンターでカットサービスを頼めますが、天井高を正確に測る必要があります。私の部屋は2,430mmだったので、ディアウォールの推奨値に従って45mm短い2,385mmでカットしてもらいました。それでも最初は少しぐらついたので、上部パーツの内部スプリングをきちんと圧縮できているか確認しながら調整しました。
実際に棚板を3枚取り付けて、本を並べてみました。文庫本と新書が合わせて約40冊、重さにして概算で8〜9kg程度です。今のところ柱の傾きはなく、安定しています。ただ、地震の際には突っ張りが外れる可能性がある点は頭に入れておく必要があります(2024年の能登半島地震以降、私はこのリスクをもう少し真剣に考えるようになりました)。
ディアウォールは「壁を使わずに壁面収納を作る」という逆転の発想で、一度立ててしまうと棚の位置を自由に動かせるのが思いのほか気持ちいい。
耐荷重・撤去後の跡・コスト——3つの軸で比べると
実際に両方使ってみた上で、数字と実感をまとめるとこうなります。
撤去後の跡について正直に言うと、ピンフックはほぼ目立ちません。壁美人のピンを抜いた後、手元の照明で斜めから確認しましたが、指の腹で触ってようやくわかる程度のくぼみが残るだけでした。ディアウォールは壁への接触がないので跡ゼロですが、天井と床に圧力がかかるため、クッション材なしで使うと日焼け跡のような薄い跡が残ることがあります(私は念のためフェルトシートを挟みました)。コストは、ピンフック単体なら500〜1,500円で済みますが、ディアウォール2セットと2×4材2本・棚板3枚・棚受け6個をそろえると合計で8,000〜12,000円前後になりました。
- 耐荷重:ピンフック(壁美人)は最大約10kg、ディアウォール+棚受けは棚板1枚あたり20〜30kgが目安
- 撤去後の跡:ピンフックは0.7mm以下の小穴、ディアウォールは壁への跡なし(天井・床に薄い圧迫跡が出ることあり)
- コスト:ピンフックは1セット500〜1,500円、ディアウォール一式は8,000〜12,000円程度
- 施工の難しさ:ピンフックは5分以内、ディアウォールは木材手配込みで半日〜1日
- 向いている用途:ピンフックは軽量の飾り棚・キッチンツール掛け、ディアウォールは本棚・収納棚など重量・大型用途
私は今のところ、軽いものはピンフック、重いものはディアウォール、という使い分けに落ち着いています。どちらも賃貸でも試せるという意味では同じ土俵ですが、「どの壁に何を置きたいか」という問いから逆算すると、答えはだいたい自然に決まる気がします。今は寝室のディアウォール棚に、最近買った植物図鑑と去年の旅行でもらった小さな陶器を並べています。梅雨が明けたら、もう1本立ててみようかと考えているところです。