古道具と現代の家具を混ぜるときのバランスの取り方
骨董市の片隅に、座面がえんじ色のモケット張りで、脚が細くカーブした昭和30年代らしき椅子が置いてあった。値札は800円。こういうものを見つけると、頭の中では「部屋に合うかな」という声と「絶対に合わせてみせる」という声が同時に鳴り始める。実際に買って帰り、IKEAのラック棚(CALLAXシリーズ)と同じ部屋に置いたとき、最初はどう見ても「場違い」だった。それから数週間、あれこれ動かしたり布を足したりしながら、新旧を混ぜるときに自分が無意識に頼っていたルールのようなものが少しずつ見えてきた。まだ完全に言語化できていない部分もあるけれど、今の時点でわかっていることを書いておく。
色は「トーン」で揃える、色相では揃えない
昭和の家具には、くすんだ赤、くすんだ緑、飴色の木材といった、彩度を落とした色が多い。一方でIKEAや無印良品の現代家具は、白、グレー、ナチュラルウッドのような「引き算の色」が基本になっている。この二つを同じ部屋に置くと、色相(赤か青かという軸)が違いすぎて浮いてしまう、と最初は思っていた。でも実際にうまくいかなかった原因は色相ではなく、トーン(明度と彩度の組み合わせ)のズレだった。
えんじ色のモケット椅子が浮いて見えたのは、隣に置いたラックが真っ白だったからだ。試しに棚の中に入れているボックスを、くすんだテラコッタ色とオリーブ色のものに替えてみたら、椅子との距離が一気に縮まった。色相は相変わらずバラバラだけど、「くすみ具合」が揃うと、脳が同じ文脈にあるものとして受け取ってくれる気がする。具体的には、古道具側のトーンに合わせて現代家具の「中身や小物」を調整する、というのが今のところ自分の基本戦略になっている。家具本体の色を塗り替えるのはハードルが高いけど、棚の中のボックスやクッションカバーは簡単に替えられる。
素材は「触感の系統」を一本通す
色が揃っても、素材がバラバラだとまだ落ち着かない感じが残った。昭和の椅子はモケット(短い毛足のある織物)と曲げ木、IKEAのラックはプリント化粧板(木目調のプリントフィルムが貼られたMDF)。触ったときの感触も、光の反射の仕方も、まるで違う。
ここで試したのは、「どちらかの素材を橋渡しする第三の素材を一枚挟む」という方法だ。具体的には、ラックの上に亜麻(リネン)のテーブルランナーを敷いた。リネンは、古道具の布張りとも、現代的な無垢材や化粧板とも、それなりに馴染む中間的な素材だと思っている。ラグを一枚敷くのも同じ理屈で、ウール混の少し厚みのあるラグが部屋に一枚あると、全体の素材感がぐっと統一される。陶器の小物を棚に置くのも有効で、陶器は時代を問わず「手仕事感」を持つ素材なので、昭和の椅子とも現代の棚とも違和感なく並んでくれる。
逆にうまくいかなかったのは、プラスチック製の収納ケースを棚に並べたままにしていたときだった。色をくすみ系に替えても、プラスチックの光沢が椅子のモケットと全く話が合わず、どこか「雑然」として見えた。素材の持つ「温度感」というか、人の手が介在しているかどうかの気配が、古道具と相性を左右している気がする。
高さの重心を意識する
昭和30〜40年代の家具は、座椅子文化と洋家具が混在していた時代の産物で、脚が細く低い、あるいは逆に妙に高い、といった現代規格と微妙にずれた高さのものが多い。今回の椅子は座面高が38センチほどで、現代の標準的なダイニングチェア(42〜45センチ)よりも少し低い。この「低さ」が部屋全体の重心を下げてくれて、それはそれで居心地がよかったのだけど、IKEAのCALLAXは高さ147センチの縦長で、部屋の視線がバラバラになる感覚があった。
対処したのは二つ。一つは、ラックの上部に物を置かず、視線が自然に止まる高さ(だいたい目線より少し下、床から110〜120センチあたり)に飾り物を集中させること。もう一つは、椅子の隣に小さなスツールか低めのサイドテーブルを置いて、「低い領域」のまとまりを作ること。こうすると、低い椅子と高いラックの間に段階ができて、目がスムーズに動けるようになる。インテリアの文脈でよく言われる「ラインを作る」というのは、たぶんこういうことだと思う(まだ完全に確信があるわけではないけれど)。
高さのグラデーションさえ作れれば、新旧の差は思ったより目立たなくなる。
「意図的な混在」と「ただの混乱」の境界線
新旧ミックスがうまくいっている部屋の写真と、ただごちゃごちゃして見える部屋の写真の違いを考えていて、一つ気づいたことがある。うまくいっている部屋には、必ずどこかに「意図的に何もない場所」がある。古道具を一点置いたら、その周囲30〜50センチくらいは余白にする。現代家具が密度高く並んでいる棚があるなら、その隣の壁は何もつけない。余白があることで、目が「これは意図して置かれている」と判断できるようになる、と思っている。
もう一点、これは経験則に過ぎないのだけど、「古道具は一部屋に三点以下に留める」というのが今の自分のルールだ。四点を超えたあたりから、現代家具の側が「添え物」になり始めて、部屋全体がテーマパーク的な雰囲気になってしまう。一点か二点の古道具が、現代的な文脈の中にぽつんとある状態が、個人的には一番しっくりくる。昭和の椅子一脚と、来月の骨董市で見つけるかもしれない何かを加えて、計二点で今の部屋は完成としようと思っている。たぶん。
まだ試行錯誤の途中なので、うまくいった方法もいつか変わるかもしれない。同じように新旧ミックスで悩んでいる方がいれば、どんな組み合わせで困っているか、気軽に話しかけてみてください。